百人一首あれこれ

今年も1年がアッという間に過ぎ去ろうとしている。もうすぐ正月だ。正月と言えば、昔は百人一首で遊んだものだ。でも、今では坊主めくりをする子供すらいない。そんな時「百人一首がよくわかる:橋本治:講談社」が目に留まった。面白い現代語訳で有名だ。自分が子供の頃にこの本があったら、もっと百人一首を好きになっていたかもしれない。百人一首の最初の歌の作者は何故天智天皇なのかが書いてある。歌は「秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ」で、現代語訳は「秋の田の刈り入れ小屋はぼろぼろでわたしの袖は濡れっぱなしさ」だ。大昔の天皇はぼろぼろの小屋に寝泊まりして稲刈りをしてたのかという気分になる。ところが、伏線があると言う。天智天皇が死ぬと壬申の乱が起きて、天智天皇の息子の大友皇子と、弟の天武天皇が争う。結果は天武天皇が勝って、奈良時代の終わりまで天武天皇の子孫が天皇になる。しかし、その系統が絶えて、再び天智天皇の孫が天皇になる。それが、平安京を造った桓武天皇の父で、そのため天智天皇は「平安時代の天皇の先祖」という扱いを受けた。だから、百人一首の最初が天智天皇になるのだと言う。因みに、著者は「昔の天皇はこういう苦しい労働を体験していてくれたんだという願望の元に、作者として天智天皇?との名が付けられたのだろうと憶測している。時代背景も考慮すると、実に奥が深い。