クーリエ・ジャポンが最近のブータン事情を伝えている。ブータンと言えば、2011年にジグミ・ケサル・ナムゲル・ワンチュクが王妃と共に来日し、歓待されたことを覚えている。ブータンは、国の発展を国民総幸福量GNHで計測する取り組みから「幸福の王国」として知られている。当時マスコミは、幸福の王国ブータンと囃し立てた。GNHとは、心理的幸福、健康、教育、文化、環境、コミュニティー、良い統治、生活水準、自分の時間の使い方の9つの構成要素から成っている。ところが、幸福の王国が不幸の王国に変わってしまったという。ブータンの主要な収入源のひとつが観光業だが、コロナ禍以降観光客が激変してしまった。若年層の失業率は30%で、国民の8人に1人が貧困状態にある。経済的に失敗しただけでなく、世界報道自由指数も33位から90位に下がってしまった。そのため、現在のブータンはかつてないほど国民の海外流出が高水準で続いている。2022年は、人口の1.5%が仕事と進学目的でオーストラリアへ移住してしまったのだ。ブータンから難民としてオーストラリアへ渡った著者は「GNHのアイデア自体は良いが、ブータン国民すべての幸福と人権に対する政府の取り組みを反映したものではない」と言っている。ブータンでは、どんなことであれ国王や政府の意向に逆らうことは出来ない。構成要素に経済と国王・政府を加味した国民総幸福量2.0版が必要だ。
コメントをお書きください