最高裁の国民審査結果が意味するもの

衆院選と同時に行なわれた最高裁裁判官の国民審査の結果、全員信任されたものの不信任率10%以上の裁判官が6人中4人に達した。前回審査では最も高いものが7.8%だったから、国民の裁判官への不信は増しているとみるべきだろう。そんな折「絶望の裁判所:瀬木比呂志:講談社現代新書」が目に留まった。瀬木氏は裁判官を33年間務め、法学の権威である大学教授だ。この本の中で最高裁の実態を赤裸々に曝いている。最高裁上層部の劣化、腐敗に伴い、中間層も、疲労し、やる気を失い、あからさまな事大主義、事なかれ主義に陥っていったと言う。特にキャリアシステム出身最高裁判事の劣化が激しいという。キャリアシステムとは、司法試験に合格した若者が司法修習を経てそのまま裁判官になる官僚裁判官システムだ。それに対置するのが相当の期間弁護士等の法律家経験を積んだ者から裁判官が選任される法曹一元制度だ。キャリアシステム出身判事は、とにかく、早く、そつなく、事件を処理しさえすればそれでよい。冤罪も気にしない。それよりも権力や政治家、大企業等の意向に沿った秩序維持、社会防衛のほうが大切と考えているという。結局、裁判所の官僚化が急速に進行してしまった結果が国民審査結果に表れていると言えそうだ。