「新・ミスター円」と異名を取った神田財務官が7月末で退任する。それを機に卒業論文とも言うべき報告書が発表された。自身が信頼を寄せる大学教授やエコノミスト20名を集めて徹底的に日本経済の未来について語りあった通称「神田勉強会」の成果を纏めたものだという。この提言書は、いわば日本人に突き付けられた宿題とも言える。現在、日本の経常収支は黒字となっているが、海外への投資で得られる収益などの第一次所得収支のみで、貿易収支やサービス収支は赤字だ。その第一次所得収支の黒字も、国内に戻らず日本のカネが海外で循環している状態なのだ。つまり「日本から海外に大量におカネが出ていく状況」が続いているのだ。これでは円安が進む一方で、日本は貧しくなるばかり、というのが、この報告書が提示した最も大きな問題点だ。更に、日本の人口減少の問題や、新NISAの普及により日本の個人金融資産が海外に流出している問題などにも言及している。具体的な提言として、労働者の賃金を上げて日本を魅力的な労働市場とすること、持続性が見込めない低収益・低賃金企業を退出させること、人的資本に積極的な投資を行うこと、TSMCのように日本への直接投資を促進させること、などを挙げている。健全な危機感を持ちつつも、前向きに改革を実施していくことが何よりも重要だと締めくくっている。神田財務官は退任後、内閣官房参与に就任するとのこと。政治家を上手く再教育し、提言の内容を一つひとつ実現に結びつけてほしいものだと思う。
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