定説を疑う心

セミが鳴き始めた。セミの声は、夏の到来を告げる一方で、儚さを感じさせる。子どもの頃から、セミは何年間も地中で過ごし、地上に出て来ると1週間で死んでしまうと言われていたからだ。自分はもうすぐ80歳になるというのに、未だに「セミの寿命は1週間」と思っていた。ところが、この定説を覆した子どもがいた。植松さんが中学3年生の時の自由研究だ。「セミは本当に1週間で死んでしまうのか」に疑問を持ち研究を始めた。まずセミを捕獲し、セミにマジックで日付を書いて離し、しばらくしてセミを捕まえて生きているかどうかを確認するという地道な作業を繰り返した。その結果、アブラゼミ32日、ツクツクボウシ26日、クマゼミ15日目に捕獲成功。いずれも1週間どころか2週間~1カ月だったことを確認した。植松さんの自由研究はセミ一筋だ。小1では「4種類のセミの鳴く時間の違い」を調べた。小2の時はセミのオスとメスのどちらが先に成虫になるのかを調べ、小4の時には冷蔵庫に5時間入れて、仮死状態になったセミがどのくらいで目を覚ますのかを調べたのだという。植松さんは現在大学生になり、海洋生物の研究をされているという。研究には「一筋」という執念が必要だ。きっと植松さんは学者として大成するに違いない。