紅麹の健康被害で、昭和電工のトリプトファン事件を思い出した。トリプトファンは必須アミノ酸でサプリメントとして使われていた。昭和電工の遺伝子組み換えのトリプトファンは、米国で睡眠導入のための健康食品として爆発的に売れた。だが、健康被害で38人が死亡した。でも、昭和電工が安全性試験を怠っていた訳ではない。ラットでは問題はなかったのだ。当初、原因は不純物によるものと推定されたが、最終的には過剰摂取によるものと結論された。要するに、少量であれば身体に良いものであっても、サプリのように過剰に摂取すれば毒に変わるのだ。ラットでは問題が無くてもヒトでは問題となる典型例だ。ひょっとすると、紅麹もこの類いなのかもしれない。この逆の例がダイオキシンだ。一時猛毒だと騒がれて法律まで改正された。ところが、モルモットには猛毒だったが、ヒトにはそれ程の毒ではなかったのだ。動物実験で安全ならばOKという考え方は間違っている。でも、ヒト実験で毒性を確認する訳にはいかない。結局、センサーを張り巡らして、ソロリソロリと慎重に事を進めるしかない。紅麹の健康被害で、機能性健康食品を見直すことになったのは一歩前進だ。
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