岸田政権の肝いり政策である「経済安全保障推進法案」が与野党の賛成多数で可決・成立した。当初この法案は対中国を想定していたもので野党は反対していた。だがロシアのウクライナ侵攻で日本での戦争にリアリティが生まれ、反対どころか賛成に回ったのだ。経済安保推進法の概要は次の通り。半導体などの戦略物資の国内調達を財政支援、インフラへのサイバー攻撃のリスク低減、AIや量子の研究開発に国が資金支援、軍事転用技術の特許非公開化等。確かに松野官房長官が言う通り「日本の経済安保の確保に向けた第一歩」だと思う。でも、一方で経済安保政策がバブル化しているのも事実だ。法案成立前から各省庁の利権獲得の主戦場となり、900億円超の経済安保関連予算が積み上げられた。問題は法律の運用方法だ。国会審議も経ずに、政府が後日「政令」「省令」などで決めることになる。コラムニストの船橋洋一は「安全保障政治と呼ばれる、私人、私企業、特定の圧力団体の利益の、国家安全保障の衣をまとったカモフラージュ現象」と表現している。この利権の裏には、あの甘利元TPP担当相が存在しているという。依然として甘利が経済安保の陰の主役であることは間違いない。政策の実行には厳しいチェックが必要だ。
コメントをお書きください