米製薬大手のファイザーとアイルランドのアラガンとの合併が波紋を広げている。最近は大型のM&Aが盛んだ。先日はバドワイザーが英SABを、米デルがEMCを取り込んだ。世界経済の低成長が続きそうなので、M&Aは手っ取り速い成長戦略であるし、今なら金利も低いからなのだろう。しかし、今回のファイザー/アラガンのケースは少し変だ。ファイザーが実質的にアラガンを買収するのに、事業主体はアラガンになり、本社はアラガンのアイルランドに置くという。そしてCEOはファイザー、COOはアラガンとのこと。どうやらファイザーの狙いは節税にあるようだ。米国の法人税率は35%だがアイルランドは12.5%。本社をアイルランドに置くだけで年間約20億ドルの節税効果があるらしい。オバマが公約した法人税率28%の実現は未だに目途が立っていない。製薬世界1位のノバルティスが本社を置くスイスの法人税率は20%だから、米国に本社があるファイザーが世界競争を勝ち抜くためにアイルランドに移る理由も良く分かる。多くの企業が後に続くに違いない。オバマもヒラリーもファイザーを強く非難している。だが阻止は出来そうもない。今後企業の海外流出が米大統領選の争点の一つになりそうな気配だ。たとえ米国が法人税率を下げても、企業流出が減るだけで流入企業が増える訳ではない。単に法人税率を下げるだけであれば、税収が減るだけだ。さて大統領と候補者らのお手並みを拝見したいものだ。
コメントをお書きください