アメリカ食品医薬品局FDAが人工トランス脂肪酸を3年後に全面禁止すると発表した。人工トランス脂肪酸はマーガリンやショートニングに含まれていて、過剰に摂取すると心臓病のリスクを高めるとの研究結果がある。WHOはトランス脂肪酸の摂取を総エネルギー摂取量の1%未満に抑えるよう目標値を設定しているが、日本の食品安全委員会は日本人の摂取量は目標値以下なので健康への影響は小さいとして規制していない。だが我が家では5~6年前にマーガリンをバターに切り替えた。トランス脂肪酸の健康への影響についての研究は、歴史も長く感動的だ。60年以上に亘ってトランス脂肪酸が動脈を詰まらせる物質だとして、危険性を訴え続けてきた研究者がいる。イリノイ大学のカマロー教授だ。教授は60年前に心臓病で死亡した患者の動脈組織中に高濃度のトランス脂肪酸を発見。その後トランス脂肪酸の危険性を実験的に証明。30~40年前頃はバターよりもマーガリンの方が安全と世間では信じられていたが、教授は食品業界に危険性を警告。10年前から食品に含まれるトランス脂肪酸の表示が義務化された。6年前に教授は使用禁止の嘆願書をFDAに提出したが返答がなかったので、2年前に訴訟を起こした。訴訟の結果FDAはやっと重い腰を上げトランス脂肪酸を全面禁止するとの発表に至った次第。カマロー教授は今年100歳を迎え未だに健在だ。一念岩をも通す。社会貢献に徹した研究者の鏡といえる。
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