落語に出て来る「目黒の秋刀魚」と言えば、場違いなものを褒めたり知ったかぶりをするたとえだが、反対の意味で干物は「沼津の鯵」に限ると言える。数年前伊豆にドライブ旅行をした時に沼津に寄った。魚市場で買った鯵の干物が美味しかった。ところが、鯵は地元産ではなく長崎の五島列島産。店の人の話によると沼津には美味しい干物を作る技術があり、鯵はその時その時のベストの産地を選ぶとのこと。一方千葉の勝浦辺りも干物で有名だ。先日房総半島をドライブした時、美味い干物屋を探してみた。昔からやまか水産の干物は美味いと評判だった。ところが、今は落ち目だという。理由は、地元産の鯵に拘り味が落ち客離れが進んでいるという。今勢いがあるのは白鳥丸水産やぴん太郎らしい。帰りの途中でぴん太郎に立ち寄ってみた。何と鯵はオランダ産で、しかも一枚一枚が真空パックされている。干物屋なのに魚の臭いがしない。店内はまるで高級和菓子店の雰囲気なのだ。変われば変わるものだと思った。疑心暗鬼でそのオランダ産を購入し、帰宅後早速食べてみた。新鮮で脂ののりも良く塩加減も適量で、極めて美味しかった。サーモンはノルエー産が主流とは聞いていたが、干物の鯵までが外国産になっていたとは知らなかった。日本の伝統技術が世界と融合していく姿を見て、何か嬉しくなった。
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