自分は2つの誕生日を持っている。だがこの世に二回生まれたという訳ではない。小学校を卒業するまでの誕生日は12月18日だった。中学校に入学するため北海道から取り寄せた戸籍謄本には、何と12月23日と記載され「この内容に相違ありません」という但し書きと町長の証明印が付いていた。でも明らかに役所の記載ミスなのだ。父に執拗に訂正を依頼したが願いは叶えられなかった。我が家は品川に住んでいたが、終戦間近は空襲が激しくなり北海道に疎開した。終戦を迎え品川に戻ったが、戸籍は北海道に置いたままだった。当時は皆貧しくて生きて行くことに精一杯だったので、父が品川から北海道へ交渉する時間的余裕など無かったのだろう。そして泣く泣く12月23日を了承した。しかし大人になるまで23日には馴染めなかった。ところが良いこともある。12月18日は射手座で12月23日は山羊座だ。星占いを見る時は、両方を見て吉の方を取ることにした。占いが吉であれば世の中が明るく見える。まさに2つの誕生日を持つ者の特権だ。更に昭和が終わってから12月23日は旗日になった。この日は日本中の人々が自分の誕生日を祝ってくれていると勝手に解釈することにした。かくして、還暦を過ぎてからやっと12月23日にも馴染んできた。
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