山形のベンチャーが人工的に合成したクモの糸の繊維を量産する技術を世界で初めて確立したと発表した。クモの糸は強度が鋼鉄以上で伸縮性はナイロンを上回るらしい。将来はカーボンファイバー以上の性能を発揮することになるのかもしれない。微生物の遺伝子組み換え技術で、クモの糸を構成するタンパク質「フィブロイン」を短時間で大量に合成することに成功したとのこと。これはこれで科学技術として素晴らしい成果だと思うが、クモの糸というと芥川の「蜘蛛の糸」を思い出す。地獄から極楽への蜘蛛の糸をカンダタが登り始めたら、多くの罪人が後を追ってきて糸が切れそうなので、来るなと言った途端に糸が切れて地獄へ真っ逆さまという物語。小松左京はパロディで、カンダタが登ってきってしまったのでお釈迦様が驚いて地獄に落ちてしまい、お釈迦様が蜘蛛の糸を登り始めるがカンダタと同じ言動をしたため再び地獄へ落ちてい行く、という話を書いている。森達也は「王様は裸と言った子供はその後どうなったか:集英社新書」で、お釈迦様が蜘蛛の糸を止めるのを忘れたため、次々と罪人たちが極楽に登ってきて地獄が空になり、活気のある極楽になった、という話を書いている。どちらも糸の強度が弱いことを前提にしている。ところが、このベンチャー技術が実用化されれば話は変わってくる。前々から童話や寓話のその後を書いてみたいと思っていた。近いうちに近代技術をベースにして名作のパロディを書いてみたいと思う。
コメントをお書きください