比較的平穏な我が家一族にとって今年は激動の一年であった。子供たち3人は皆独立しているが、長男は海外勤務となり、次男は営業の一部の責任が任され、三男には待望の子供が生まれた。そして義母には新しい友達が増えた。長男は日本におらず次男は土日出勤が多くなり、孫たちの運動会や催し物へ参加することが飛躍的に増えた。孫たちの喜ぶ顔を見ると、来てよかったなとこちらも嬉しくなった。義母の新しい友達は猫だ。メスの野良猫で義母がシロと名付けた。シロはキジトラで胸の周りが真っ白で、居住まいも品が良く顔も美形。近所に住んでいる野良猫だが昼間だけ食事をしに我が家にやって来る。初めて来たときは、そばに近づくと人をフーッと威嚇した。義母が「フーッじゃないでしょ、ニャーと言いなさい」と言いながら餌を与え続けると、フーッがフッとなり、ンッニになり、ニヤへ変わり、今ではニャーニャーになった。懐いては来たが所詮野良猫で、決して触らせはしない。50cm程度に近寄ると義母でさえ逃げてしまう。そんなシロではあるがボーイフレンドがいる。シロとは正反対で不細工なクロ。シロは皿に入れたペットフードとヨーグルトの空き箱を半分に切った容器に入れた牛乳をいただくのが日課になっている。シロは自分が食べている時にクロが割り込むと猫パンチを喰らわす。クロは仕方なくいつも木や石の陰でシロが食べ終わるのをじっと待っている。しかしシロは必ず餌を残す。暫らくするとクロが腰を屈めて抜き足差し足で現れ残飯を平らげる。だが悲しいことにクロの顔は馬鹿でかいため牛乳は飲む事が出来ないところに何とも言えないユーモアを感じる。ところが最近クロを見かけることが少なくなった。シロはいつも餌を確実に半分残し、皿の傍でクロの来るのを待っている。好かれれば嫌いな素振り、嫌われれば後を追う、まるで男と女の人間模様と同じで興味は尽きない。我が家の今年の成果は三男の孫誕生と義母の猫半匹扶養と言えるかもしれない。
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