文科省は修士論文を作成しなくても修士号を取得できるよう省令を改正する方針を決めたと発表した。博士号取得を目指す大学院生が対象で、早い時期から専門分野に閉じこもらずに広い視野を持つ人材を育てるのが狙いとのこと。しかし修士論文作成は研究成果そのものの評価よりも、研究のオリジナリティーについてPlan-Do-Seeサイクルを回して一つの研究成果としてまとめる能力があるかを検証するためにある。従って博士の卵が修士論文も書かずに博士課程に進むということは、研究活動の基礎能力を判断せずに進級させるということになる。大学院生を甘やかしてはいけない、それでは人は育たない。大学院生に広い視野を求めるのならば、大学入学初期の高校レベルのおさらい講義を廃止し、そこに視野を広げる講義を充てるべきだ。難関の大学入試をやっと突破し胸をふくらませ入学してきても、高校と変わらないのでやる気を削がれる学生は多い。おさらい講義は百害あって一利なし。「修士論文なしの博士号取得」は「ゆとり教育」の弊害による先送りの玉突き現象のように見える。更なる学力低下が目に見えるようだ。文科省が応用能力の高い博士作りを目指すのであれば、まずは大学の講義レベルをアップさせるべきだ。文科省には先送り志向を止め先取志向に切り替えることが求められていると思う。
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