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30日 11月 2024
「人体大全:ビル・ブライソン:新潮社」によると、ヒトは約30兆個のヒト細胞と、30兆から50兆個の細菌細胞とから成っているという。ただし、ヒト細胞の85パーセントは赤血球で、通常の核やミトコンドリアを持たず、実際には単なるヘモグロビンの容れ物なので、本物の細胞とはいえない。そこで差し引くと、ほぼ90%が細菌細胞ということになる。また、遺伝子的に見れば、ヒトの中には自分の遺伝子が約2万個しかないが、細菌の遺伝子は2000万個もあるので、その視点からすると、ヒトのおよそ99%は細菌で、たったの1%がヒトなのだ。つまり、ヒトは何兆、何十兆もの小さな生き物の住まいと言えるのだ。しかし、細菌はヒトに役立ってくれるのだ。自分では利用できない食物を分解してエネルギーの約10%を供給し、その過程でビタミンB2やB12などの有益な栄養素を抽出してくれるのだ。ヒトは20種類の消化酵素を生成するが、細菌は1万種類、つまり500倍多く生成するのだ。もし細菌がいなければ、ヒトははるかに栄養状態の悪い人生を送っていたことになる。
29日 11月 2024
大分大学が、高純度の竹セルロースナノファイバー(竹CNF)が水以外の有機物のガスを放出しない材料であることを世界で初めて実証したと発表した。従来、プラスチックや接着剤から出るアウトガスは、宇宙空間に打ち上げた衛星カメラで撮影する際にレンズを曇らせる原因として課題だった。それが解消され宇宙での活用が見込まれるのだ。大分大学理工学部の衣本研究室は、SDGsとイノベーションに繋がる技術開発を目指している。燃料電池、二次電池の材料、水から水素を取り出すための電極、竹CNFの研究開発をしている。竹に注目したのは、異常繁茂で生物多様性の低下などの社会問題(竹害)を引き起こしているからとのこと。セルロースナノファイバーは、環境にやさしい植物由来の素材ながら、鋼鉄の5分の1の軽さで5倍の強度を持ち、熱で膨張しにくい、吸水性が高いなど、さまざまな特徴がある。今後色々な分野で活用されることになるだろう。同時に竹害が減れば、まさに一石二鳥と言えそうだ。
28日 11月 2024
薬の供給不安が続いている。厚労省は医薬品の供給に関する業務を統括する安定供給責任者の設置を製薬会社に義務づけることにした。安定供給責任者は、原料調達から生産計画、在庫管理などを管轄し、出荷制限や停止の可能性が出てきた場合には同省への速やかな報告をすることになった。2025年の通常国会に関連法の改正案の提出をめざすという。2020年のジェネリック医薬品メーカーでの品質不正が発覚して以降、供給不安が収まらない状況にある。特にせき止め薬や解熱剤が手に入らない。1万6700品目のうち19%が出荷制限や停止状態にあり、このうち後発薬が6割を占めている。安定供給責任者を設置し、安定供給を目指すのは良いが、厚労省にはもっと成すべきことがある。1つは、製薬会社の内部監査の徹底だ。今までは性善説に頼り過ぎていた。性悪説に切り替えて監査を厳しくすべきだ。もう1つは、薬価の見直しだ。せき止め薬や解熱剤は、薬価が低すぎて儲けが出ない。だから製薬会社は製造を渋るのだ。薬価の下げすぎは、製薬会社イジメに過ぎない。そこそこ採算の合う薬価に改定すべきだと思う。
27日 11月 2024
環境省が発表した、水道水に含まれる有機フッ素化合物PFASの全国調査では、今年度は9月までの時点で国の暫定目標値を上回った事業はなかったとのこと。しかし、一方で12月1日に放送される予定のNHKスペシャル「追跡“PFAS汚染”」では、PFASが全国各地の水道水から検出されているという。どちらが正しいのだろうか。環境省の調査は、全国の水道事業者の6割程度だというから当てにならない。PFAS汚染は確実に広がっていると見るべきだろう。PFASは「永遠の化学物質」と言われている。殆ど分解が出来ないからだ。ところが、立命館大がPFASを光触媒で簡単に分解する技術を開発したとのこと。PFASはフッ素と炭素の結合を持つ化合物で、1万種類以上があるとされる。熱や薬品に強く、水や油をはじく性質を生かして、フライパンや食品包装のコーティング剤、カーペットなどのはっ水加工に使用されている。PFASのうち、PFOSとPFOAは発がん性があるため、国際条約で製造が規制されている。その他のPFASは健康への影響は確認されていないが、分解しにくいために自然環境に長く残る。いずれ問題になってくるはずだ。立命館大のPFAS分解技術は地球環境にとって光明と言えそうだ。
26日 11月 2024
相変らず公的年金の将来像の不安が解消されない。厚労省は有識者会議を開き、基礎年金の水準引き上げと在職老齢年金制度の見直しの検討に入った。問題は、全ての人が受け取る基礎年金を底上げする案だ。何とその財源は、会社員などが加入する厚生年金の積立金を基礎年金に回すというのだ。これは、自営業、非正規、専業主婦の国民年金の赤字を、サラリーマンと企業が払う社会保険料で穴埋めするということだ。サラリーマンは有無を言わさず毎月の給与から高額な社会保険料を強引に天引きされている。その積立金を国民年金に回すというのだから、開いた口が塞がらない。国全体で見れば、一括りの年金の中の調整に過ぎないと考えているのかもしれないが、それは屁理屈だ。拾数年前にも同じ話があり、揉めたことがあった。それ以降厚労省は密かに厚生年金の積立金を基礎年金に回していたらしい。それを隠しきれずに今回は有識者会議の俎上に上げたのだろう。そもそも、有識者会議とは曲者だ。厚労省の息の掛かった御用学者の集まりに過ぎない。厚労省作成の案を丸呑みし、アリバイ作りの役を演じているに過ぎない。全国のサラリーマンは声を挙げなければ、厚労省の案が通ってしまうことを認識すべきだ。
25日 11月 2024
「なぜ世界は存在しないのか」の著者で今世界でもっとも注目を浴びている哲学者マルクス・ガブリエルは「AIの内部は回路と電流だけで、思考が無い」と言っている。人間には主体的思考がある。すべての思考には、それを支える論理システムがある。思考は、論理システムのなかにのみ存在している。一方AIはあくまで人間の思考回路になぞらえて設計された機械であり、能動的、主体的な思考は出来ない。だからAIは思考出来ない、と。その結論が「AIの内部は回路と電流だけ」ということになる。一方話は変わるが、人間とコンピューターを繋ぐ事例も存在している。イーロン・マスクのニューラリンクだ。脳にチップを埋め込み、脳とコンピューターを接続する。そのヒト臨床試験の被験者第1号がノーランド・アーボーだ。アーボーは脊髄を損傷し動けなくなってしまった。口に加えた棒でiPadの画面をタッチすることでパソコンを操作していた。ところが、ニューラリンクによって、考えるだけでパソコンを操作できるようになったのだ。その結果、アーボーの人生は激変した。スピードチェス世界大会に招かれ、実際にパリまで遠征して数百人の観客を前に、念じるだけでチェスをプレイする様子を披露した。ニューラリンクは盲目を克服するテストにも取り組んでいる。まさに人間とコンピューターの融合が始まっている。
24日 11月 2024
結婚記念日の記念として、熱海の「せかいえ」に宿泊した。数年前カミサンが美容院の雑誌で「せかいえ」の紹介記事を読み「いつかは」と夢を見てしまったのが発端だ。結婚して53年が過ぎた。金婚式も簡素に済ませた。では、値は張るが行こうかということになった。「いつかはここから眺めて見たい」と願っていた相模湾を一望出来るシートに座った。天気は晴天で風も無く、穏やかな相模湾の向こうに房総半島がクッキリ見える。もうこれだけでも十分だ。何時間でも座っていたいと思う光景であった。ディナーは肉料理つくしをチョイスした。座席数20位が一列に並ぶオープンキッチン。規模の大きさに圧倒されたが、コックの手捌きも一流だった。旨かった。ホテルの気遣いといい間違いなく今までのベストの宿であったと思う。ディナーの前に時間があったので、伊豆山神社まで行ってみた。片道所要時間20分程度だ。途中に逢初川があった。2年前土石流で悲惨な事故があったあの逢初川だ。来年の完成を目標に補修工事が行なわれていた。あまりにも長いためかなり躊躇したが伊豆山神社までの180段の階段を登った。その階段の下には一本の参道が続いている。海岸の走り湯から本殿までは837段あるという。昔の人は837段を登り切ったに違いない。改めて伊豆山神社の霊験さを感じた次第。
23日 11月 2024
トランプがイーロン・マスクを政府効率化省のトップに据えると発表した。トランプは公約に、パリ協定再離脱やEV補助金廃止を挙げている。EVの世界首位企業テスラのCEOであるマスクにとっては逆風のはずだ。でも、そのマスクがトランプに選挙資金として180億円も注ぎ込んだ。マスクの狙いは一体何なのだろう。次世代の車と騒がれたEV人気も今や下火だ。テスラは次なる手を打つ必要がある。間違いなく自動運転だ。だが、それだけのためにトランプに忠誠を誓うだろうか。マスクは、テスラ以外にもスペースX、スターリンク、生成AI、SNSのX(旧Twitter)などを所有している。既に、政府効率化省のトップとして官僚の頭数を大幅に削減すると表明している。と言うことは、マスクの狙いは社会の仕組みを先進的なものに変えることなのかもしれない。そこに商機を見出そうとしているのかもしれない。ひょっとして、上手く行けば、トランプの後釜の大統領となって、米国自体を作り替えようとしているのかもしれない。
22日 11月 2024
日経朝刊の記事「転機の中国14億人の素顔」が面白い。副題は「バズワードで見る中国」で、SNS投稿数の高いものを羅列して、現在の中国の状況を示している。永遠の神YYDS!、弾丸旅行、白菜並み住宅値崩れ、英語ミックス、BYDも乗った流れ、建設止まったマンション、朝9時~夜9時残業文化、社会に閉塞感自暴自棄、巻き込まれる消耗戦、潮流一変公務員人気、将来不安寝てスルー、宅男、単身の犬、鶏の子、海外脱出とある。この見開き2頁で中国庶民の状況が理解出来る。不動産不況の長期化や人口減少など転機を迎えた中国で、SNSには社会問題を端的に示した造語が溢れ、若者による数字やアルファベットを使った言葉遊びもみられる。現在の中国は、習近平の失政で経済はどん底状態だ。しかも、口を挟むことを許さない習近平の高圧主義が、経済を立て直すための議論を封じている。河南省の鄭州では、数万人規模の若者たちが夜間、自転車に乗って約50km先の古都・開封までスープ肉まんを食べに行くという「ナイトサイクリング」が大流行中だ。いよいよ天安門の再来が迫っているように見える。
21日 11月 2024
ソニーグループがKADOKAWA買収に向け協議に入ったと報じられた。ソニーグループの時価総額は18兆円で、KADOKAWAは4千億円だが、今回の報道で6千億円に跳ね上がった。ソニーグループの中核事業は、ゲーム&ネットワーク、音楽、映画。一方KADOKAWAは出版大手の角川書店が源流で、角川映画、ニコニコ動画、N高等学校などの教育事業だ。異質な企業で接点が無い。何故なのだろう。KADOKAWAの稼ぎ頭は出版・IP創出セグメントだ。ライトノベルの出版で生まれたIP(キャラクターや作品の権利)を、アニメやゲーム、放送に展開して儲けている構図だ。ソニーグループは、このIP創出力に目を付けたのかもしれない。単に現事業を拡大するための買収ではなく、中核事業をIPという新しい軸方向へと拡張していくためではなかろうか。しかし、買収情報をロイターがすっぱ抜いてしまい、KADOKAWAの株価が高騰し約1.5倍になってしまった。さて、ソニーグループは買収を決断するのだろうか。中核事業を更に拡張するためであろうから、買収すると思う。効果を考えればソニーグループにとって6千億円は安いものだと思う。

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