29日 12月 2024
英フィナンシャル・タイムズFTが、日本でユニコーン企業が育たない理由を単純明快に指摘している。ユニコーンとは、ベンチャーキャピタルVC業界で誕生した造語で、時価総額が10億ドル(約1500億円)を超える未上場のスタートアップを指す。経団連が2022年に、2027年までに国内スタートアップを10万社以上、ユニコーンを100社に増やすよう求める政府への提言を発表した。政府は慌てふためいて多額のスタートアップ支援を始めたが、日本のスタートアップ資金調達総額は年々減少しているのが現状だ。日本には、ピュニコーンが多いという。ピュニコーンpunycornのpunyは「未熟で弱々しい」という意味で、つまり、ピュニコーンとは成長が止まってしまったユニコーンなのだ。FTは日本にピュニコーンが多い理由は、早過ぎる株式公開段階で創業者が満足してしまうことと、事業がある程度成熟した段階に達したスタートアップへの支援不足だと指摘している。更に、世界的に競争の激しい知的財産を破壊したり進化させたりする必要が無く、古いビジネスをデジタル化すれば良いという低い目標に満足してしまう風土があるからだとも言う。どうやら、ユニコーンを創出するための活気あるビジネス環境づくりが急務と言えそうだ。
28日 12月 2024
東京地検特捜部は、政治資金規正法違反の疑いで告発した旧安倍派の裏金議員や秘書ら計65人を一斉に不起訴とした。犯罪事実を認めつつ裁量で起訴を見送る起訴猶予は、現職議員5人と秘書16人だ。だが、検察審査会に審査を申し立てられる可能性は十分にあるから、裏金事件は越年必至だ。自民の裏金事件の解決が、とうとう年を越すことになった。でも、少しは煮詰まってきた。参院政治倫理審査会でキックバック廃止の経緯を巡って世耕弘成前参院幹事長の名前が相次いで上がった。これで世耕が自民裏金の全容を知るキーパーソンに浮上した。一方で、野党は旧安倍派の松本元会計責任者(政治資金規正法違反で有罪確定)の衆院予算委員会への参考人招致を求めることで一致した。少数与党の影響で松本招致は実現可能だ。安倍派幹部5人は否定しているが、松本は2022年8月の派閥幹部会合で還流再開を決めたと証言している。証言が全く食い違っている。松本招致が実現すれば裏金派閥を長年率いた森喜朗元首相の国会招致も現実味を増す。いよいよ核心に近づきそうな気配だ。少数自民と責任を負わざるを得なくなった野党のせめぎ合いが、政治を真っ当な道へと導いているように映る。
27日 12月 2024
薬不足が常態化している。インフルエンザが猛威を振るい始めたが、薬局には咳止めも抗生物質も無いのだ。薬不足の要因は、ジェネリック医薬品メーカーの不祥事による製造停止とドラッグ・ラグと言われている。国は医療費低減のためジェネリックの促進を推進してきた。だが、製造能力の確保や市場での健全な価格競争を促す政策はしてこなかった。そこに綻びが生じたということだ。一方、ドラッグ・ラグも国の政策が関わっている。ドラッグ・ラグとは、海外ではすでに使用されている医薬品が、日本で承認使用できるまでに生じる時間差のことを意味する。海外では使われているのに、日本では使えないのだ。日本では、薬事承認申請をするにあたり、治験の最終段階に日本人が入っていることを重要視している。国は海外メーカーに日本人を入れるよう依頼はしているが、なかなか入れてくれない状況にある。でも、韓国や台湾、シンガポールは治験に組み入れられているケースが多いという。日本は、薬価改定のたびに価格を引き下げるので市場としての魅力が無いのだ。更に、承認申請の書類も、日本独自のものを作成して厚労省に提出しなければならない手間があるのだ。結局、ドラッグ・ラグがドラッグ・ロスへと繋がっている。厚労省は、医薬品確保について、抜本的な見直しを行なう必要があると思う。
26日 12月 2024
エストニアは世界屈指の教育制度を確立している。バルト海沿岸にある人口135万人ほどのこの小さな国がどうやって世界ランキングの上位に食い込むことに成功したのだろう。エストニア教育・研究相が、仏誌ル・ポワンにその成功理由を述べている。3つの要因があると言う。1つは、グロースマインドセットだ。15歳の生徒がどれくらい自分の知的能力を信じ、勉強によって成績を良くすることができると考えているかを示している。2つ目は、エストニアには努力の文化があること。子供達は「成功するためには、熱心に勉強しなければならない」ということを知っている。3つ目は、教師の自立性だ。教育に関する決定は大部分がそれぞれの現場でなされ、学校や教師が判断し、政府が口を出すことは無い。エストニアにも、国の教育カリキュラムがあり、教育課程の修了時に子供がどういった能力を習得しているべきかを明確に定めている。国レベルのチェックがあり、結果が出ていなければ校長が教師の交代を決めることが出来るようになっている。でも、政府は目標を達成するために使う教育方法や、ツールは定めていない。全ては現場が決定するのだ。この3つ目が最も重要だ。日本もエストニアを見習う必要があると思う。
25日 12月 2024
10年に1度の学習指導要領の改定が、中央教育審議会に諮問された。文科省は、情報教育の充実化、総授業時間数を増やさない範囲での学習進度に応じた学校の裁量の拡大、についての諮問を求めた。2年かけて審議・答申し、2030年度から改定される予定になっている。文科省の指示は一見現代事情の解消に合っているかのように見える。しかし、教育現場に今以上の負担をかけるだけの内容とも言える。教育内容は雪だるまのように増え続けている。小学校には外国語もプログラミング学習も導入された。思考力・判断力・表現力も重視されている。教科書のページ数は増え続けている。教師も児童・生徒にも負担は増すばかりだ。しかも、大学を目指すためには放課後の塾通いだ。現在は全員が大学へ行く時代になっている。塾に行かなければ大学受験も覚束ないのが現実だ。と言うことは、現在の学校教育が破綻しているということだ。見方を変えれば、塾へ行かないと受からない大学入学試験内容にこそ問題がある。文科省は、小手先の中央教育審議会でお茶を濁すのではなく、大学入学試験内容の改正から手を付ける必要があるはずだ。
24日 12月 2024
インフルエンザの新規感染者数が週を追う毎に倍増している。遂に1医療機関あたり42人となり、警報レベルの基準となる30人を超えた。休校や学年閉鎖になった学校や保育所は5800施設に達している。一方で、新型コロナの患者報告数は全国で1医療機関あたり5人を超え、4週連続で増加している。更に、インフルとコロナだけでなくリンゴ病にも注意が必要とのこと。患者の多くは9歳以下の子どもが占めるが、大人が感染するケースもまれではないという。コロナでお馴染みになった二木芳人昭和大医学部名誉教授は「コロナ禍で行われていた手洗い、うがいなどの感染症対策がおろそかになっている。コロナワクチンが有料になり接種する人が減った。その上ウイルスは変異していて感染し易い。以前より重症化しづらいので隠れコロナ感染者も多いはず」と言っている。思い返すと、コロナ禍の時期にはコロナも風邪もインフルも罹らなかった。自分はコロナ禍以降、うがい、手洗いは欠かさない。それが功を奏していると思う。コロナもインフルも、誰でも感染対策はとれるのだ。ただ疎かになっているだけ。幸い年末年始に9連休がある。国民全員がコロナ禍を思い出し、うがい、手洗い、マスクを徹底し、外出を控えれば、コロナ・インフルを断ち切る奇跡が起きるかもしれない。
23日 12月 2024
鴻海傘下で再建したはずのシャープが再崩壊し、未だに再浮上する気配は無い。シャープは町田社長時代に液晶テレビの亀山モデルで一世を風靡した。図に乗って堺に大工場を建設したが、中国や韓国の安価液晶台頭により競争力を失った。その結果、堺工場が重荷になり赤字に転落。鴻海に買われてしまった。でも、鴻海から来た戴正呉社長が債務超過の解消等により、見事にシャープ再建を成し遂げた。ここまでは良かったが、後が悪かった。戴社長は、日の丸液晶に拘った。JDI白山工場を買収し、残存者利益に舵を切ってしまった。液晶ディスプレイを生産する堺工場の運営会社SDPも完全子会社化した。これが再崩壊の引き金になったと言われている。シャープと言えば、先行者利益が経営理念だった。シャープの創業者である早川徳次は常に「他社がまねしてくれる商品をつくれ」と口にし、当時のシャープには独創性を重んじる社風が根付いていた。シャープが再生するには原点に戻るしかない。有機ELにはまだ望みはある。KDDIとの人工知能向けデータセンター運営にも望みはある。要は如何にシャープらしさを導き出せるかだと思う。
22日 12月 2024
多才な能楽師である安田登が「うたで読む日本のすごい古典:安田登:講談社」で、和歌の素晴らしさを語っている。和歌はミュージカルにおける歌のような存在で、何度か読み、うたってみて、和歌を「体に染み込ませ」ていくと、それまで無味乾燥だと感じていた古典文学が、彩り豊かなキラキラとした世界に変わりうると言う。中でも面白いと感じたのが「枕詞」についての記載だ。枕詞を脳内ARと呼んでいるという。拡張現実ARとは、現実の風景の上にバーチャルなものを重ねて見るような技術を指す。つまり、枕詞を聴くだけで、情景が脳内に浮かび上がる。例えば、枕詞「久方の」と謡い出すと、そこに「空」や、そらに浮かぶ「月」や「天女」などが出現する。その中から、たとえば「天女」をバーチャルな手でつかんで自分の中に入れる。そうすると「天つ少女の羽衣なれや」という謡が出てくるという。算盤を習った人が暗算するとき、空中にバーチャルな算盤を置いて暗算をするのも脳内ARなのだ。枕詞をウィキペディアで調べると、何と200以上もあるのだ。せめて2~3は、使い熟せるようにしたものだと思う。
21日 12月 2024
今年も1年がアッという間に過ぎ去ろうとしている。もうすぐ正月だ。正月と言えば、昔は百人一首で遊んだものだ。でも、今では坊主めくりをする子供すらいない。そんな時「百人一首がよくわかる:橋本治:講談社」が目に留まった。面白い現代語訳で有名だ。自分が子供の頃にこの本があったら、もっと百人一首を好きになっていたかもしれない。百人一首の最初の歌の作者は何故天智天皇なのかが書いてある。歌は「秋の田のかりほの庵の苫をあらみわが衣手は露にぬれつつ」で、現代語訳は「秋の田の刈り入れ小屋はぼろぼろでわたしの袖は濡れっぱなしさ」だ。大昔の天皇はぼろぼろの小屋に寝泊まりして稲刈りをしてたのかという気分になる。ところが、伏線があると言う。天智天皇が死ぬと壬申の乱が起きて、天智天皇の息子の大友皇子と、弟の天武天皇が争う。結果は天武天皇が勝って、奈良時代の終わりまで天武天皇の子孫が天皇になる。しかし、その系統が絶えて、再び天智天皇の孫が天皇になる。それが、平安京を造った桓武天皇の父で、そのため天智天皇は「平安時代の天皇の先祖」という扱いを受けた。だから、百人一首の最初が天智天皇になるのだと言う。因みに、著者は「昔の天皇はこういう苦しい労働を体験していてくれたんだという願望の元に、作者として天智天皇?との名が付けられたのだろうと憶測している。時代背景も考慮すると、実に奥が深い。
20日 12月 2024
三菱UFJ銀行の支店の貸金庫から十数億円超の顧客の資産が盗まれた。何と犯人は貸金庫の鍵の管理者だったという。三菱UFJ銀行は「人事の見誤りではない。少し管理が不十分だった」と釈明したが、釈明になっていない。銀行の貸金庫の安全性は絶対的なものだったのに、根底からひっくり返された。信用第一の銀行業にとって、絶対にあってはならないレベルの事件なのに、反省がなさ過ぎる。一方で、三菱UFJ銀行の副支店長が強要未遂罪で起訴された。副支店長が6代目山口組組長の「司忍」などと騙り、顧客企業を脅していた事実が発覚した。貸金庫の窃盗よりも質が悪い。週刊文春はこの他にも、高齢富裕層へのハイリスク商品を売るための研修資料の存在とか、経営トップらが立て続けに軽井沢の物件を購入している実態や、暗雲が垂れ込める4トップ交代人事まで企業体質の実態を報じている。魚は頭から腐るというが、この諺は三菱UFJ銀行のためにあるようだ。これを機に、三菱UFJ銀行は魚頭腐銀行とでも行名変更した方が良い。